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長野県の病院で地域医療に携わっていた医師栗原一止が、母校である大学病院で勤務するようになって2年、前シリーズからの続編です。
医師として大学院生として、そして父として、夫として過酷な勤務や日々の生活をこなしている栗原先生の医療班に、29歳の女性臓癌患者、二木(ふたつぎ)さんが入院してくる。状態は非常によくないが、栗原先生の所属する医療班は懸命の治療を施していく。大学病院という巨大医療組織の中で、二木さんの治療を通し、医療とは何なのか、医師はどうあるべきか、家族とはどういうものか、などが語られているように感じます。また、大学病院の特異性、そこで働く医師の過酷さは実体験からくるものでしょうか、迫力さえ感じるものでした。そうした過酷で陰鬱な状況では暗い内容になってしまうところ、栗原先生の医師としての思いや行動、仲間との関係や会話などが実に心地よく語られ、喜劇的でもあり、陰鬱さを吹き飛ばしてしまうものになっています。夏川さんの文章力、表現力の見事さによるものです。そして、全体を通して医師としてのあるべき姿をも語っているように思えます。おりしも新型コロナウィルスの感染拡大で、医療崩壊が叫ばれる厳しい状況の中、懸命に治療を続ける医療従事者たちの使命感、意志の強さについて考えさせられる内容でした。改めて、医療従事者に頭が下がる思いです。
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山岳ガイドを務める得丸志郎、まだ残雪残る4月、白馬鑓温泉付近の様子を確認後、下山途中に大学の山岳部で同期だった池谷博史と出会う。池谷は白馬岳山頂に向かうという。おぼつかない足取りであり、得丸が山頂までのガイドを引き受けることに。大学卒業後、池谷は長野県警に就職、山岳警備にあたっていたが、交番勤務を命じられ退職、現職に。一方池谷は警視庁公安部に就職していた。卒業以来20年ぶりの再開である。池谷は、時間ができたから山に登ることにしたとは言っているが、池谷はどこか違和感を感じる。下山の遅れを連絡を取ったところ、下界では何やら警察沙汰が起きで騒然としていることを知らされる。電話を切ると、池谷がピストルを向けていた。池谷に何があったのか、今後どうしようとしているのか。池谷は白馬岳山頂ではなく日本海へ向かうという。得丸は日本海まで連れて言うことを約束する。そして白馬岳に向かう途中、女性登山者に出会い、いったん分かれるが、その後再開する。その女性は、やはり大学部で同期だったエリート部員若林純一の妹であった。若林は大学卒業後プロ登山家になり、K2登頂後下山途中で遭難、遺体は見つかっていない。その兄の遺体を捜索するために山に登るようになったという。そして、なんと池谷を殺そうとするに刺客も現れ、壮絶なサバイバルが繰り広げられる。池谷は何をしたのか、なぜ日本海を目指すのか。日本海に何があるのか。少しすこしづつ明らかになっていくが。体力の極限状態にありながら果たして日本海へたどり着くことができるのか。
スリリングな展開の中で、登場人物のそれぞれの思いや関わり合い、登山の魅力、過酷さ、なぜ山に登るのか、山岳警備隊の職務についてなどが語られていく。山岳ミステリーとしてとても面白く読むことができました。
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久々に9巻目が発刊されました。2018年11月以来2年ぶりです。今回は御用人の萩原良彦の監視役である狐神の黄金の正体が明かされるとともに、絶体絶命のピンチが訪れます。
日本の国を創造した神、国之常立神(くにのとこたちのかみ)の眷属であった龍が、二体に分かれ兄弟として東国と西国を治めることになります。それは、天照の神以前の話。東国を治めるのは黒龍、荒脛巾神(あらはばきのかみ)、西国を治めるのが金龍。この金龍こそが黄金の正体でした。その後、長い年月の中で人間が増え、その統治が大日霎神(おおひるめのかみ)こと天照皇大神へと移っていく。そして黒龍と金龍は人を統治するのではなく、大地を統治するものとなっていく。それは人に対して何の感情も持たず、ある面冷徹な神で、しばしば「大建て替え」を起こすこともありました。「大建て替え」とは大地震や津波、干ばつなどの天変地異のことで人間の数を大幅に減らしてしまうことです。
ある時黒龍は、東北の蝦夷の子供の母親に扮することになり、人の感情を知ることになります。そして、蝦夷を滅ぼした西国人に対して怒り覚え、手が付けられなくなり、国之常立神によって眠らされてしまいます。長い時が流れ、現代においてついに黒龍が目を覚まし、再び「大建て替え」を起こそうとします。黄金は、兄弟の目覚めを察知し、会いに行くのですが、なんと黒龍に食われてしまいます。良彦は、突然いなくなってしまった黄金を探し、黒龍に食われてしまった黄金を助け出そうと大国主の神とともに荒脛巾神の元へ出かけますが、強靭な荒脛巾神には太刀打ちできず大けがを負ってしまいます。荒脛巾神を止められるのは国之常立神のみ、その登場を待つしかないのですが沈黙を保ったままです。本書はここまで、続きは10巻に続きます。この物語は、東北地方の蝦夷に伝わる伝説をもとに書かれているようですが、どうも坂上田村麻呂がカギを握っているようです。果たして黄金は助け出されるのか、荒脛巾神は大建て替えを実行してしまうのか。次巻(10巻)が発売されるのは3/25、発売が楽しみであり、待ち遠しくもあります。
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珈琲屋シリーズ3作目かと思ったら4作目でした。今回は7つの短編から構成されていますが、全体としてもつながりを持っています。
地上げ屋を殺してしまい、8年の刑に服してきた店主の宗田行介と店の常連であり、行介を温かく受け入れてくれた、元恋人の冬子と幼馴染のプレイボーイ島木。この3人が集う珈琲屋に様々な重荷を背負った人々が集まってくる。
第1話は「ひとり」、ホテルマンであったがリストラに会い、離婚、世捨て人状態で河川敷に仮設小屋を建て、段ボールを集めて暮らしている米倉。そんな米倉のところに子犬が迷い込んでくる。「イル」と名づけ、家族として、相棒として生活していた。たまたま暑い日に水をもらいに飛び込んだのが珈琲屋だった。そしてある大雨の時にイルが濁流に流されてしまい、イルを探しい出かけていく。第1話には自称「医大受験生」の舞が登場するが、第7話でその正体が明らかになる。
第2話は、「女子高生の顔」、女子高生が一重瞼のいわゆる昔の美人顔を理由にいじめにあい、自分の顔にコンプレックスをもつ。そして整形手術をするために選んだバイトが・・・・。
第3話は、サブタイトルにもなっている「どん底の女神」、父親に虐待を受けて育ち、就職するもうまくいかず引きこもり状態になる40歳の男が、あるときコンビニのレジの女性を好きになる。そんな悩みを珈琲屋で打ち明ける。珈琲屋にはそういうこと話してしまう雰囲気があるようだ。しかしその女性にも暗くつらい過去があった。何をやってもダメな男が、男としての意地を見せることができるのか。
第4話は「甘える男」、勉強はできて有名大学にはいり、一流の企画会社に就職するも現実に挫折して退社、笑顔だけが取り柄でいきてきたが、現実と向き合えずにいるニート気取りの27才の青年、博之。父親は亡くなっており、化粧品のセールスをしている母親と暮らしているが、そんな母親が再婚をほのめかす。母親と息子の微妙な関係、そこに珈琲屋の面々が絡んでくる。
5作目は「妻の報復」、物騒な題名ですが、夫の浮気を疑い、自らも浮気をしようとする42才の妻、その発端が珈琲屋にある。しかし、現実は・・・。
第6話は「最終家族」、中期の癌と宣告された47歳のサラリーマン。妻にどう言い出すか悩む。行きつけのおでん屋のおかみには話せるのに。珈琲屋はそんな決断に少しだけ手助けをする。
最後の第7話「ふたり」は、第1話の「ひとり」を受けている。自称医大受験生の舞の正体が明らかになり、悪い男につかまりとんでもなことをやらされていた。最後はどうするのか、どうなるのか。また、イルを探しに行った米倉が2ヶ月ぶりに帰ってくる。イルは見つからなかったが。そして最後に・・・・・。
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珈琲屋シリーズを久しぶりに読んで、3作めかと思ったら5作だったので、4作めを読む前に2作めをもう一度と読みました。前回読んだのが2015年の5月、ほとんど内容を覚えていないことに愕然とするとともに、新鮮に読むことができました。「特等席」から始まり「指定席」で終わる短編の6作。過去に殺人を犯した珈琲屋の店主、宗田行介と元恋人冬子に同級生の島木、この3人を中心に珈琲屋にやってくる悩みや苦難を抱えた人々の話。殺人者である行介が引き寄せているともいえるが、それぞれの内容が重く考えさせられる内容で、中には結末が描かれておらず、どうしたんだろう、と読者に想像させるようなものがいくつかありました。
第一話、「特等席」は花屋をつぶし、家庭も壊れた店主の話。その店主は毎晩通うおでん屋でいつも同じ末席に座っている。第2話、「左手の夢」は行介と刑務所で一緒だった鍵師の葛藤の話。第3話、「大人の言い分」は、家庭内暴力で別れた夫が、約束の養育費を治めず、母親が子供に暴力をふるうようになる。結末はチョット切ないです。第4話、「ちっぽけな恋」は、交際を始めた中学生の両親は。双方とも離婚しており、女子中学生の母親から交際を反対される。二人のとった行動と結末は・・。第5話「崩れた豆腐」は、不景気の中、夫婦で営む豆腐屋の話、妻は店を閉めることを夫に伝えるが・・・。第6話、「はみ出し純情」は、優秀な兄をもち、親からも比較されて育った弟の生き様についての話。最後の第7話「指定席」は、珈琲屋のカウンターで冬子がいつも座る席。第1話で出てくるおでん屋のおかみの過去に絡んだ話。最後がえっというような状況で終わっており、次作を読みたくなる内容になっています。
池永さんの本は、人の持つ人情の機微や感情、言葉と裏腹な心の底にある本当の気持、などを上手く表現していて、心に響いてくるような気がします。
このちっぽけな恋の内容を元に、NHKでドラマ化されたのですが、残念ながら私は見ていません。再放送があれば見てみたいと思います。オンでデマンドでも探してみましょうか。
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「新章 神様のカルテ]を読んで、「神様のカルテ 0」 が発刊されていることを知り早速読みました。神様のカルテシリーズの原点を描いた作品で、4つの短編から構成されています。
「有明」 は、主人公の栗原一止が、大学の医学部時代の話し。有明とは大学の学生寮の名前です。
「彼岸過ぎまで」 は、一止が就職することになる本庄病院が、365日24時間対応の看板を掲げるようになったいきさつについてが語られます。
本の題名になっている「神様のカルテ」 は、一止が就職した本庄病院での研修医時代の話し。ドタバタの病院内での状況と、「神様のカルテ」の意味が、指導医である板垣医師から語られます。
最後の「冬山記」 は、栗原一止の妻となる片島榛名の冬山でのエピソードです。
今、テレビでまさに「神様のカルテ」を放映中です。古狐先生の場面は思わず涙ぐんでしまいました。
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シリーズ3作めです。先に4作目を読んでしまい、2作目を読み直してからこの3作めを読みました。「珈琲屋の人々」シリーズは、7編の連作短編集として構成され、第1編と最後の第7編は呼応した形になっています。
1編は、「恋敵」。全編で配布で刺されてしまった冬子、病院で治療に当たった医師が患者であった冬子に恋心を抱きます。行介にとってのライバルになりますが・・・。
2編は、「ヒーロー行進曲」。落ちこぼの子供たちを預かる塾の塾長とそこに通う二人の子供が、モンスターペアレントに立ち向かいます。
3編は、「ホームレスの顔」。夫が親切にしてあげているホームレスは、もしかしたら学生時代に付き合った人かもしれない、しかもつらい経験を持つ相手。でもひげが覆っていて分からない。果たしてむかしの恋人だったのか。
4編は「蕎麦の味」。行介の幼馴染の冬子は、4年前父親が亡くなった後も母親の典子とともに蕎麦屋を守ってきた。典子の娘に対する気持ちや揺れる思いが描かれている。
5編はサブタイトルにもなっている「宝物を探しに」。商店街に夢であった古本屋を開業した若い夫婦の葛藤。妻が店の改装を申し出るが、夫は気が進まない。以前から探していた本が見つかったら改装しようと妻が提案。しかし古書が手にはいった時に夫の取った行動は・・・。
6編は「ひとつの結末」。行介が刑務所に入っているときにお世話になった刑務官が珈琲屋に訪れ、とんでもない告白をする。珈琲屋での修羅場、果たして結末は。
最後の7編は「恋歌」。島木の浮気、本気か浮気か。また、冬子を治療した医師の笹森が冬子に結婚を申し込む。冬子は回答を保留、返答期限が迫る。果たして冬子の出した結論は。
今回は、特に男女の心の葛藤がとても機微に表現されていると感じました。珈琲屋の人々がかかわりあいながら珈琲屋がその気持ちを打ち明ける場所になっています。行介と冬子の行く末も気になるところではありますが、それぞれの物語における人間の思い、行動にいろいろと考えさせられました。
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11文字の殺人の11文字とは、「無人島より殺意をこめて」の11文字である。
女流推理作家「わたし」の付き合って2ヶ月の恋人川津雅之が無残な殺され方をする。殺される前に「命を狙われている」と言っていたことが現実のものとなってしまった。ここから、川津を紹介してくれた編集社に勤務する友人の萩尾冬子とともに謎解きが始まる。調べを進めていくと、1年前、川津が参加したヤマモリ・スポーツプラザ主催のクルージングが浮かび上がり、そこで一人のルポライターが事故死していることが判明する。さらに調査を進めていくうちに、クルージングの参加者がが次々に殺されていく。いったい何が起きているのか、犯人は誰なのか、最後は、そういうことだったのか、ということになりますが、とても読みごたえがありました。面白く読めたのですが、少し凝り過ぎではないかとも思えるくらいのからくりでした。事件を追いかける女性推理作家は、結局最後まで「わたし」で貫かれ、名前は出てきませんでした。
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又吉の著書、4作目になるのでしょうか。ただ、この東京百景は、大阪から上京して10年目の頃に、上京した頃のことからその時の最近までを、その時思ったことを綴ったエッセイです。上京したのが1999年ということなので、概ね20年前になります。デビュー作の「花火」、2作目の「劇場」もそうだったのですが、又吉のちょっと普通ではない日常が、悲哀とユーモアとがまじりあいながら表現されていて、何とも言えない、又吉世界を作っているように感じます。「東京百景」とあるように、100のエッセイがありるなか、ピース、綾部のかかわるものが100の中にはほとんど出てきません。最後の「W章」になって、その辺のいきさつが語られています。この「W章」は、文庫本を出版するにあたって追記された物だそうです。
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出雲にある人間も妖怪もそして神も泊まれるホテル櫻葉。従業員も人間もいればあやかしもいます。みんな個性豊かな従業員です。そんなホテル櫻葉を舞台にしたファンタジーの第5巻、5話が納められています。
第1話は、陰陽師の四華のひとつである椿木家の跡取り、椿木雪匡がホテルにやってきます。時を同じくして、出雲の子供たちが発熱するという事件がおこります。子を思う母親の気持ちは妖怪の世界でもおなじ、チョット過激な妖怪退治の物語です。第2話は、第1話からの続きで、ホテルの支配人である柳村雪津の正体が明らかになります。第3話は月の住人が地球にやってくる話しです。第4話は、神在月に出雲に集まる神々を、ホテル櫻葉の従業員がおもてなしをする話し。最後は番外編としてホテルのロビーにあったテレビがなぜ壊れたか、を明らかにする話しです。
陰陽師の家系の人間とあやかしの関わり合いが面白おかしく、時にせつなく、時にスリリングに語られています。
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第5巻に続き連続で読みました。第6巻も5話が納められています。第一話は、妖怪や神、人間界では陰陽師が読んでいるという「風の文新聞」を発行している二人の妖怪の話し。編集者の妖怪がホテル桜葉の従業員を取材するという形でうまく登場人物を紹介しているようです。第2話は、ホテルの厨房で働くワイン好きの蛇妖怪の火々知(かがち)をおそう女性の蛇妖怪のはなし。実は火々知の姉である水不知(みずち)でした。水不知は何しにやってきたのでしょうか。第3話は、ホテル桜葉のマスコットキャラクターを考える話し。笑えます。第4話は、写真家の織部総司と娘の葵、さらに祈雨(きさめ)という少年の話し。この祈雨という少年、すべてが明らかにはなっていませんが、とてつもない力を持っているようです。そして、この物語の主人公である時町見初(ときまちみそめ)の秘密がまた少し明らかにされます。番外編である5話は、ホテル桜葉の総支配人であり、陰陽師の椿木家の一員であった柳村雪図が、永遠子に言い寄ってくる妖怪たちに仕掛けたとても怖いゲームの話し。少しづつではありますが、時町見初を通しての今後の物語が明らかになってきています。
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果たして黄金はどうなってしまうのか、そんな気持ちでワクワクしながら読み始めました。
目を覚ました黒龍こと荒脛巾神(あらはばきのかみ)は、兄弟神である金龍こと黄金と一体化しようと飲み込んでしまい、「大建て替え」(天変地異)を起こそうとする。良彦は、黄金を救いに荒脛巾神のもとへ向かうが、大けがをしていとも簡単にしりぞけられてしまう。この状況下、かつて良彦が御用を果たした神々が、あたかもオールスター勢揃いのように登場し、良彦のけがを治したり力を貸してくれる。荒脛巾神の神をいかに鎮めるのか、黒龍(荒脛巾神)も金龍(黄金)もかつて人間に対して切ない経験をしていた。そのことをずっと引きずっていた。その気持ちをどう癒し、荒脛巾神をどう鎮めるのか。それは、坂上田村麻呂がキーマンと思っていましたが、予想外のキーマンが現れます。
「神様の御用人」は、これで完結です。とても面白く読ませていただき、いいことか悪いことか、神様が身近に感じられました。最後に御用人としての良彦の行く末がつづられています。実にほのぼのとしたものです。
作者あとがきに、9巻と10巻の表紙を一体ものにすることにこだわったとありました。それぞれを改めて見てみると、9巻はとても暗いイメージ、10巻は明るいイメージ、ひとつのつながった絵とは思えませんが、つなげてみると確かにひとつの絵になりました。お見事です。
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東大を中退してスチュワーデスになった容姿端麗なエー子こと早瀬英子と同期で対照的なビー子こと藤真美子。二人はマンションをシェアして住んでいる。この二人を主人公に、飛行機を舞台にした事件が7話納められています。
第1話「ステイの夜は殺人の夜」 鹿児島へのフライト、夜の店で乗客のひとりと一緒になる。ところが、その乗客の妻がホテルで殺されていた。夫はエー子たちと一緒だったいうアリバイがあるが・・。
第2話「忘れ物にご注意ください」 赤ちゃんがいる人たちのために企画されたベビーツアー。最後に飛行機から降りた後に、赤ちゃんの忘れ物。この赤ちゃんはどこからきたのか。
第3話「お見合いシートのシンデレラ」 ビー子が乗客から声をかけられ結婚まで申し込まれる。いったいどういうことなのか。どんな狙いがあるのか。
第4話「旅は道連れミステリアス」 福岡発東京行きの飛行機に顔見知りの福岡の菓子屋の社長が搭乗していた。翌日、同じ便に搭乗していた女性と共に東京のホテルで遺体で発見される。いったい何が起きているのか。
第5話「とても大事な落とし物」 青森行きの機内で遺書が落ちているのを発見、宛名も署名もない。落とし主をどうやってつき止めるのか。
第6話「マボロシの乗客」 「108便の乗客を駐車場で殺して海に捨てた。金を出さないと乗客を次々に殺す」という脅迫電話がはいる。駐車場では血の付いたハンドバッグが発見されるが死体は上がらない。108便の乗客を調べたが該当する女性客はいない、犯人の狙いは何なのか。
第7話「狙われたエー子」 エー子の学生時代の元恋人の上司が盛岡で殺された。上司と対立していた元恋人が疑われるが、同窓会に出席したというアリバイがある。しかし、飛行機を乗り継げばそのアリバイは崩せる。乗客の捜索が始まるが、果たして犯人は誰なのか。
1989年ころの作品です。今はキャビンアテンダント、煙草も吸えません。時代を感じました。
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大学の助教授、椎崎鏡子の一人息子、陽介が愛犬オービーの散歩中、急に道路に飛び出したオービーに引っ張られ、トラックに引かれて亡くなってしまう。たまたまそこに居合わせた大学生の仲間4人、椎崎先生の授業を受けており、少し前に陽介とオービーにも会っていた。なぜオービーは突然飛び出したのか、大学生4人のそれぞれの人間模様と事件の真相の解明が絡み合いながら物語が進んでいく。解説者の言う「青春ミステリー」という表現がぴったりの内容である。
物語は、事件後4人が集まり、この中の誰かが陽介を死に至らしめてしまったのではないか、と話し合うところからスタートする。4人とは、女性と付き合ったことのなかった秋内静と大学に入ってから知り合った、つかみどころのない友江京也。京也の彼女のひろ子。そしてひろ子と高校の同級生で、秋内が心を寄せる羽住知佳の4人。この4人に加え、同じ大学で動物生態学の講義を担当するチョット変わった間宮未知夫助教授が重要な位置を占めている。題名になっているソロモンの犬のソロモンとは、それを指にはめると動物の言葉が分かるようになるという「ソロモンの指輪」からきている。オービーはどうして飛び出したのか、秋内と間宮が謎を解き明かしていく。
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7巻も5話と番外編が1話納められています。巻が進むごとに内容が重くなってきます。
第1話:炎細工の火呉。ホテル桜庭ノ裏山で開催される女神や女性の妖怪だけのイベントに、火をつかさどる妖怪の火呉がやってきてひと騒動起こす。
第2話:居場所と名前。櫻葉ホテルの創始者であり先代女将が櫻葉悠乃が、ホテルに住み着いていた座敷童子を雇うことにして露明と名付けた。その露明けが結婚しホテルをやめたが、子供が生まれほてるに客として訪れる。そこでまた事件が。
第3話:果たされなかった約束。ある日、ホテルの一室に忘れ物があった。藤色の風呂敷に包まれた白いペンダントのようなもの。その部屋に泊まった客は「沙鐵(さてつ)というおばあさんの妖怪で、凄い腕を持った刀鍛冶職人であるという。見初(みそめ)は忘れ物を届けるため、天狗の妖怪緋菊(あかぎく)とともに沙鐵の住む山を訪れる。その昔、沙鐵にはすさまじい過去があり、ホテルに泊まりに来たのにも理由がもありました。
第4話:夜が来て、少女は舞い降りる。陰陽師の四華が仕える神「ひととせ様」の祠が、四華のひとつである楓月家(ほうづきけ)によって壊される。ねらいは、絶対的な神であり、圧倒的な力を有するひととせ様の力を我がものとするため。企てたのは楓月家の後継ぎである楓月璃世。ここで、ひととせ様とは何もであるか、見初との関わりが明らかになります。
第5話:神と人。5話から続いていて、4話でひと騒動起こした楓月璃世の顛末が語られます。ひととせ様は、元々は人間でありました。それが「触覚」の能力を駆使したことで、神になったとのことです。見初も触覚の能力をもっています。今後はどうなっていくのか。
物語全体を通して、見初と冬緒の関係や従業員との生活がほのぼの系、陰陽師の世界の話が過激的でバランスしているように感じます。
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出雲のあやかしホテルまとめ読みです。8巻には、番外編含め5話が納められています。大きな話しの流れからして、小休止的な内容です。
第1話:凍て付く心。人の感情を形にする能力を持つ妖怪、灯頼(ひより)がホテルにやってくる。結婚式でうれしい気持ちを形にするはずが、とんでもないことに。
第2話:最後の幸せと鬼。料理長の桃山が、毎夜訪れていた美人客は、無津(むつ)という名の鬼、獄卒であった。獄卒とは、地獄で亡者に罰を与える以外にもう一つのつらい役目があった。その役目とは。
第3話:豊穣の神の山。風来(ふうらい)と雷訪(らいほう)が白玉の誕生日プレゼントを探しに豊穣の神「兎迦(うか)」の住む山へと向かう。兎迦の山では、孫の「 果紫(かし)」と兎迦を慕う妖怪たちが暮らしていた。神の世界にも家族問題があるようである。二人ではなく二匹は、白玉へのプレゼントをゲットできるのでしょうか。
第4話:硝子人形。晩夏という神様が、ホテルに忍冬(すいかずら)という名の「硝子人形」を忘れていった。実は忘れたのではなく置いていったのであるが。硝子人形を横取りしようとする妖怪も現れ大騒ぎに。硝子人形とは何なのか、晩夏という神様はどういう素性の神なのか。少し切ないお話しでした。
番外編:恋愛アドバイス。冬緒が見初を死ぬほど好きになってしまうが、見初冷静沈着。とりあえず交換日記を始めたが、その内容は業務日誌。そんな交換日記からドタバタ劇がはじままる。
見染の能力や、陰陽師の四華の争いなどについて、今回は大きな進展はありませんでしたが、エピローグでホテル櫻葉に恨みを持っていそうな少年が現れます。9巻は大きな事件が起こりそうです。
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出雲のあやかしホテルシリーズ3冊連読です。第9巻には、4つの話しと、二つの番外編が掲載されています。
第1話:憎しみの最果て。碧羅臼(へきら)というとてつもなく強い妖怪が、永遠子(とわこ)の命を狙っていると、椿木家の次期当主、雪匡(ゆきまさ)から告げられる。碧羅と椿木家の因縁、永遠子はなぜ碧羅から命を狙われるのか。ホテル櫻葉創設の頃、何かがあったようです。
第2話:「封じた記憶、奪った思い」 人の記憶を消し去ることができる妖怪遊葉(ゆうは)。その昔、少女の記憶を消し去った。そしてその孫である真太郎と再開。妖怪と人間の切ないちょっといい話でした。
番外編1:「小さな薬師」 草花を操れる元山神の柚枝(ゆえ)が、薬を作ろうと薬草を採取しているところに狸の妖怪風来(ふうらい)と狐の妖怪来訪(らいほう)が現れ、大騒ぎになってしまう。
第3話:「銀杏と少女と狼と」 秋を呼び寄せる神、抄伊(すい)。神ながら体が弱く、銀という部下を通して下界の情報を得ているが、その銀が帰ってこない。抄伊は不安に駆られ、世間では秋が来ない異常気象が続く。銀は、椿木家の陰陽師たちによって狙われていた。はたして秋はやってくるのでしょうか。
第4話:「亡樹の枝」 かつてある村に願い事を何でも叶えてくれる、常ノ寄様という神が祀られていた。願い事は人の命を奪うことまでエスカレート、そんな神があってはいけないと、呪いがかけられた。その呪いとは、亡樹の枝(なぎのえだ)とよばれ、人として生まれ変わり、体に木の枝のようなあざが現れ次第に大きくなり命を失うというもの。そんな呪いをかけられた元神である彗(さとる)、見初(にそめ)たちはどうやって呪いを解いていくのか。神と妖怪の世界にも複雑な因縁がありました。そしてエピローグには、その後の話があります。
番外編2:「風来と来訪の御褒美」 風来と来訪が手にしていたのはスマホ。妖怪は写真に写りません。果たしてふたり、いや2匹の使い道は?
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鍼灸師である工藤ナユタ、針治療に全国を飛び回っている。第1章で北海道のベテランスキージャンパーの元へ治療に行った際、風の流れを読むことができる不思議な少女羽原円華と出会い、ジャンパーを優勝へと導いていく。第2章ではナックルボールを取ることができないキャッチャーを助ける。さらに第3章では、工藤が高校の同級生と再開し、息子が川で溺れてしまいふさぎ込んでしまっている高校の恩師を再起させることに。そして、第4章では、カミングアウトした同性愛の作曲家のパートナーの不自然な死の真相を解き明かしていく。空気や液体の流れを読むことができる不思議な力を持った少女の物語で、その力の謎が明らかになっていくのかと思いきや、実は別のところにもうひとつの物語が隠されていた。ところがである。第5章になると、工藤ナユタも羽原円華も登場せず、硫化水素ガスによる事故死の話しになる。最後は、次の物語への含みを持たせた終わり方になっている。それが、私も既に読んだ「ラプラスの魔女」であり、だから「魔力の胎動」なのでしょう。「ラプラスの魔女」の内容は、うっすらとしか覚えておらず、再度読み直そうと思いました。調べてみると、「ラプラスの魔女」の単行本の刊行が2015年、「魔力の胎動」が2018年でした。東野さんは敢えて、逆転させて執筆、刊行させたのでしょうか。
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「陽だまりの天使たち ソウルメイトU」を読んで、「ソウルメイト」の続編であることを知り、読むことにしました。犬と飼い主の感動の物語が7話納められています。
第1話「チワワ」:犬といえば大型犬と考えていた佐伯泰三、妻がチワワを飼うことに。そして住みよい環境を求めて軽井沢に移住します。ところが妻が病気になってしまいます。少し切ない物語です。
第2話「ボルゾイ」:父を病気で亡くした小学生の悠人の母が再婚、新しい父親はボルゾイを飼っていました。少年と犬と新しい父親の、少し事件をはらんだ物語です。
第3話「柴」:東北大震災で母を亡くした神田。母は柴犬の「風太」を飼っていたが、ある時、被災地の野良犬と化した犬がTVに映され、それが風太でした。そして風太を保護すべく動物レスキューに参加、果たして風太は見つけられるのか。
第4話「ウェリッシュ・コーギー・ペンブローグ」:希美(のぞみ)の家のお向かいさんが引っ越した際、飼っていた犬を置き去りにしていきました。希美は飼うことにするのですが、1週間で音を上げ、友人の真波(まなみ)に助けを求め、結局真波が飼うことになります。このコーギーは虐待を受けていて、全く人を寄せ付けません。真波の家で元々飼っていた「レイア」には少しづつ心を開いていきます。そして・・・。
第5話「ジャーマン・シェパード・ドッグ」:犬に噛まれた過去を持つ愛(めぐむ)は、散歩で出会うシェパードを連れている男性が気になります。その犬の名前は「メグ」同じ名前でした。
第6話「ジャック・ラッセル・テリア」:小学生の亮(りょう)の両親は離婚し、父親は軽井沢で暮らしています。誕生日に買ってもらったラッセルテリアのインディーは乱暴で手に負えない犬でした。妻は、元夫に助けを求め、夏休みの間、しつけのため、亮とインディーを引き取り一緒に暮らすことにします。
第7話「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」:バーニーズマウンテンは短命なのだそうです。それは、頭数の減少による繁殖で遺伝病が多くなってしまったとのこと。そんなバーニーズを飼い始めた夫婦。元々寒い地方が産地ノ犬であり、軽井沢で暮らすことを決意するのですが、その矢先、胸にしこりが見つかり、悪性の腫瘍であることが判明します。犬と人間のつながりを壮絶に描いた作品でした。
どの物語も犬の犬種による特徴、人間とのかかわり方を見事に描き出しています。個人的には犬を飼うことは嫌いではないのですが、以前飼っていた犬との別れの経験から、今はまだちょっと考えてしまいます。
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通事故をテーマとした短編集です、6話納められています。1989年から1991年に書かれたもので、煽り運転やノーヘルなど、少し時代を感じました。やはり交通事故は怖いです。車の運転気を付けましょう。
第1話:天使の耳
本の題名になっています。信号のある交差点で外車と軽自動車が事故を起こします。軽自動車の運転手は死亡しますが、後部座席に座っていた運転手の妹は奇跡的に無傷でした。外車に乗っていたのは若い男、ケガはなく信号は青だったと主張します。妹は兄の無実を晴らすべく、様々な音を頼りに証言をひっくり返します。しかし、ほんとに天使の耳なのかどうか・・・。
第2話:分離帯
会社の帰り会社員の車の前を走っていたトラックがいきなり急ブレーキを掛け、中央分離帯にのり上げ横転し対向車と激突。トラックの運転者は亡くなってしまいます。会社員は事故直後にコンビニの前に路上駐車していた黒のアウディが発進していくのを目撃していました。トラック運転手の妻は、執念でアウディの持ち主をつき止めます。そして妻のとった行動は・・・。
第3話:危険な若葉
男が狭い抜け道を運転していると、前を初心者マークを付けた車がノロノロ運転。煽ったりパッシングをしたり、するとスピードを上げカーブを曲がり切れずにガードレールに激突してしまいます。男は何もせずその場から逃げてしまいます。運転していた女性は病院で治療を受けますが一時記憶が飛んでいました。同じ時期に発生していた幼児殺人事件と絡んだとんでもない復讐劇でした。
第4話:通りゃんせ
雪の朝、路上駐車していた車が当て逃げされます。ダメもとで警察に届けるも相手にされず。ところが、私がぶつけましたと犯人が名乗り出てきます。普通なら名乗り出たりしません。なぜ名乗り出たのか。その理由には悲しい理由がありました。
第5話:捨てないで
婚約者の女性の実家に挨拶に行った帰り、高速道路で前を走っていた白いボルボからコーヒーの空き缶が捨てられ、運悪く助手席の女性の顔に当たり失明してしまう。白のボルボはそのまま走り去ってしまうが、乗っていたのはで不倫相手とゴルフの帰りの男女。この二人、男の妻の殺人を計画する。婚約者二人は白のボルボを探す。捨てられた空き缶が何とも重要な役割を果たします。
第6話:鏡の中で
乗用車とバイクの事故。バイクは19才の青年が運転、ノーヘルで頭を打ち亡くなってしまいます。乗用車はマラソンで有名な企業のコーチが運転していました。コーチは大学の教授を訪問した帰りだったという。警察は、車のブレーキ痕に違和感を抱き調査を進めていくが、そのままで書類は処理される。ところが・・・・。
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コードネーム「兜」、文房具メーカーに勤務、高校生の息子と妻がいるサラリーマンではあるが、実は裏の職業を持っている。それはいわゆる闇の殺し屋。しかし、妻には頭が上がらず、気を使いながら生活している。どこか、テレビドラマの必殺シリーズを思い出してしまいました。ぼんくら役人の中村主水、婿入りで妻に尻に敷かれているが実は闇の仕掛人。「兜」に仕事を与えている元締めは、小さなクリニックの医者であるがほんとの正体は分からない。「兜」こと三宅は、息子が高校生になり、足を洗いたいことを医者に告げるが、なかなかな認めてもらえない。しかし、ついに認めさせると周りが騒がしくなる。同業者が命を狙いに来るのである。後半、一気に場面が変わります。あえてここでは書きませんが、いわゆる闇の殺し屋の生き様、その中での家族愛を感じました。読み物としては面白かったです。
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私も実家の墓を建てるのに悩みましたが、結局お寺の檀家に入りました。将来についても考えるところがあります。そんなわけで興味深く読まさせていただきました。
主人公はくしくも私と同じ年、しかしながらその生活ぶりは我々一般人とはチョットかけ離れており、加えてアホかと思われるような生活ぶりで、読み物としては大変面白かったのですが、都会のお墓事情以外についてはあまり参考になりませんでした。
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関さんの新刊を本屋さんで見つけて購入しました。サブタイトルにあるように、縄文から平安までの古代史をこれまでの関さんの見解をコンパクトにまとめたものです。非常に分かりやすく、これまでの関さんの本の復習のような感じで読みました。
古代史は、考古学の新たな発見等から色々なことが分かってきており、これまでの通説が変わってきています。例えば、縄文時代の様子は、三内丸山遺跡の発掘で意外と進んだ文化を有していたとか。有名な纏向遺跡の発掘で、ヤマト建国の様子が見えてきたなど。また、関さんの考えで、邪馬台国論争が古代史の解明を遅らせているというのは新鮮でした。古代史にはもっと論ずべきことがあるとのことです。それから、日本書紀の記述内容に隠された真実については、藤原氏の都合の悪い事は隠されているという事をベースにした論調です。蘇我氏は悪玉ではなかったとか、聖徳太子の立派さはでっち上げで、存在そのものも疑っている、など。今回新たに感じたのは、今までになかった万葉集の話。確かに万葉集は歌集ではなく、歴史書と言ってよいように思います。
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この本の内容は、小学生5,6年生向けの学習書の「学習」に記載されたものを、文庫本用に加筆修正されたものなのだそうです。
主人公は、小学校の教師が、何らかの都合で長期間休まなくてはならなくなったときに、臨時教師として赴任する非常勤教師。そんな非常勤教師の勤務中に事件が起こる。殺人事件からいじめ問題などを題材にした、学校ミステリーといった内容で、非常勤教師の立場や子供たちの心理描写がリアルに表現され、ミステリーとしても面白い内容になっています。非常勤教師を主人公にする東野さんの発想にも感服です。
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原田マハさん得意のMOMA(ニューヨーク近代美術館)を舞台とした美術小説です。MOMAに勤務あるいは関わる様々な人々、キュレーター(学芸員)だったり、キュレーターを目指すディレクターだったり、はたまた警備員だったり。また、MOMAに影響されて人生を歩んできた人、MOMAの創始者だったりと、いろんな方向からの物語です。ニューヨークの2001年9.11テロや、2011年3.11、日本の東北大震災に絡んだ話しも出てきます。
いつもながらですが、原田マハさんの小説は心洗われ元気が出てくる気がします。
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地理学と言いながら、内容は地球の歴史的な内容で、私がこれまでに何となく抱いていた自然に対する疑問を解いてくれるような内容でした。
へ―そうなんだ、そういうことだったんだという目からうろこの事例をいくつか挙げます。
まずは、東京都内の地盤形成の歴史、新宿に高層ビルが多いのは、地盤がしっかりしていて費用がかからないから。
地形の形成にかかわる氷河の影響は面白かったです。日本にもかつては氷河がありその痕跡が残っている。
富士山は三つのプレートの交わるところにあり、他に世界に類はなく、あるべきところに存在しているとのこと。
イ王国は仕事で何度か訪れたことがあるのですが、なぜ4月が一番熱いのか。日本では7月から8月なのに。それタイは赤道直下で北回帰線乃内側にあるため、4月に太陽が真上になり、夏至には太陽が北側にずれるから、ということです。なるほどです。
日本には親潮と黒潮という海流がありますが、大陸の右側に暖流、左側に寒流が流れる。それは地球の自転に伴う空気の流れから生じるもの。
シーボルトは幕末に国籍を偽って日本にやってきたとのこと。目的は、日本の植物の豊富さに驚き、標本採取だったとか。ヨーロッパでは、イチョウは化石上の植物だったのだそうです。
著者の知識の深さと、ところどころに織り込まれたの実体験が語りが興味深く、また面白く読むことができました。
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日本初の女性総理大臣、相馬凛子。以前、連立内閣で細川護熙総理大臣が誕生したことがありましたが、どこか背景が似ているような気がしました。でも、女性総理大臣、しかも40歳代という若さ。主人公はその夫である相馬日和、鳥類学者として大学に勤務している。妻が突然総理になり、生活が一変する。女性総理の生き様、東リ大臣を妻に持った夫、喜劇的な面もあるが、スリリングなところもあり、世相を表しているところもあり読みごたえがありました。この2年、コロナ禍のなか、安倍政権から菅内閣へそしてついこの間岸田内閣が発足しました。女性候補も立候補したものの実現には至りませんでしたが、そう遠くない時期に女性総理が誕生するのではないかと思います。
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東野圭吾のチャレンジ小説、今までに読んだことのない推理小説、そんな感じでした。
複雑な家庭環境に育ち、離れ離れに暮らしていた兄妹が、ようやく一緒に暮らせるようになる。その妹には詩の才能があり、ある野心家の男と結婚することになる。ところが、その婚約者が結婚式の最中に死んでしまう。その男はとんでもない男で、殺されても仕方がないような人間だった。
物語は、妹の婚約者を殺した容疑者3人の視点で語られていくが、最後まで犯人は明かされない。解説が袋閉じになっているのも斬新だが、その解説でも明らかにされない。
容疑者のそれぞれの立場で語られる手法、袋閉じの解説、犯人んが明かされない、そういったところが東野さんのチャレンジ小説ではないか、と感じた次第です。
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今年(2021年)亡くなられた半藤一利さん。どこかちびまる子ちゃんのおじいさんに似ており、私にはプロ野球の往年のピッチャー、フォークの神様とといわれた杉下茂投手にも似ているような気がしてなりません。
日本のいちばん長い日、それは太平洋戦争終戦の日、玉音放送が行われる8月15日までの1日のことですが、内容は、終戦末期、広島、長崎への原子爆弾投下から、ポツダム宣言受託、そして玉音放送に至るまでの政府首脳、軍幹部、玉音放送に携わった人びとの歴史的行動の記録とっ言ってよい内容です。無条件降伏に軍が素直に応じたはずがないことは想像できますが、いったいどな経緯があったのか。玉音放送は、そんな混沌の中でいかに準備され、実行されたのか、そんな興味を持って読み始めましたが、簡単ではなかったことは想像出来ますが思った以上に色々なことが起きていました。そして、日本人にとって天皇とはどういう存在なのか、明治維新以降の軍とはどいうものだったのか、などを考えさせられました。日清/露の戦争の勝利も太平洋戦争に至った原因があるような気もします。また、当時の軍幹部は、武士の究極的存在だったのではないかとも思いました。
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23年前の少女殺人事件で完全黙秘を貫き、無罪となった容疑者。23年後、実家であるの静岡県のゴミ屋敷が火事になり、行方不明の女性の遺体が発見され、容疑者として逮捕されるがまたしても証拠不十分で釈放されてしまう。そんな中で、容疑者が殺されてしまう。窒息死ではあるが、その方法と手段が分からない。草薙刑事とガリレオ教授こと湯川教授がからくりを紐解いてゆく。だれが犯人なのか、どんなからくりがあるのか、最後にどんでん返しもあり、二つの事件がつながってゆく。今回も楽しくワクワクしながら読むことができました。それにしても液体窒素之取り扱いには注意しなければと改めて思いました。
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ガリレオシリーズ、御存じ草薙刑事と大学のバトミントン部で同期だった物理学者の湯川准教授が事件を解決していく短編集。5つの事件が納められています。題名にあるように、ガリレオ先生にとっては苦渋な事件でありました。
第1章.落下る おちる
マンションから女性が落下して死亡した。ところが、部屋には殴られたと思われる鍋が残され、直前まで恋人と一緒だったことが判明する。しかし、恋人の男性は、マンションの階下その落下を目撃しており、鉄壁のアリバイがある。いかに時間差で飛び降りを実現させたのか、ガリレオ先生の推理が始まる。果たして結末やいかに。
第2章.操縦る あやつる
湯川准教授のやはり物理学者である恩師の家で教え子が集まるパーティーが開かれた。そこで、離れに住む恩師の息子が日本刀のような鋭利な刃物で殺される。だれが、どうやって殺したのか。
第3章.密室る とじる
湯川の同級生が結婚してペンション経営を始めるが、そこで客が崖から飛び降りて自殺するという事件が発生、疑問を感じた湯川の同級生は、草壁刑事を通して湯川に相談した。そこには意外な結末が待っていました。
第4章.指標す しめす
ある家で、子供家族がハワイ旅行中に母親が殺され、タンスに隠しておいた金の地金10kgが盗まれ、番犬として飼っていた犬もいなくなるという事件が発生した。金の地金のことを知っている人物は限られていて、近所に住む保険セールスの女性が疑われることになるが、その娘がダウジングを使って番犬の死骸を発見する。またしても湯川教授が犯人を割り出していく。
第5章.攪乱す みだす
警視庁に、予告殺人の脅迫状が届く。それは警察に協力して事件を解決する准教授への挑戦状とも思える内容であった。その予告殺人に対して、湯川准教授が犯人を追い詰めていく。物理現象も絡んだ難敵をいかにつき止めていくのかが読みどころです。
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ガリレオシリーズ、3冊連続です。子供を産めない女性は結婚する意味がない、というゆがんだ考えの持ち主の真柴義孝、結婚して1年が経過し子供ができないことから妻の綾音に分かれることを告げる。結婚した当初からの約束ではあったのだが。本の冒頭に、そのことを告げられた妻の綾音が殺意を抱くことが語られている。犯人が綾音であることを暗示してしるのだが、これは作者の挑戦状のように感じられる。どうだ、トリックを解いてみろ、と。
別れを告げられた翌日、綾音は実家の北海道に帰ってしまう。その間に義孝氏が殺されてしまう。コーヒーに毒が混入されたようではあるが、どのように混入されたのか全く分からない。綾音の完全犯罪なのか、それとも別に恨みを持つ者の犯行なのか。草薙刑事とガリレオこと湯川教授、加えて内海薫刑事がどのようにトリックを解いていくのか。
パッチワークの先生である綾音の教え子若林広美との人間関係、綾音と義孝氏の出会い、義孝氏の知られざる過去などが微妙に絡んでくる。ところどころにヒントは隠されていたのですが、はなかなか想像できない、逆手を取ったトリックでした。相変わらず面白く読むことができました。
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