2017 表紙と感想


冊数
書 籍 名
感  想
 



 堂場さんのスポーツシリーズです。スポーツ省が、オリンピックにおける金メダル獲得数の倍増計画を掲げ、目玉として高校生で5000mと10000mで日本記録を出した仲島の育成に着手。メンタルの弱い仲島にメンタルサポートとして柔道で金メダルを取り、引退したばかりの沢居が任命される。金メダルを取ることとは、国策でスポーツ選手を育てることは、走ることとは、その意義について考えさせられる。











 あやかしお宿シリーズの3作目。あやかしの住む世界、隠世(かくりょ)の温泉宿で、祖父の借金を返すために食事処を開くことになった葵。温泉宿のあやかしたちとも打ち解け、食事処もうまくいき始めたところで、ライバル温泉宿との間で事件が起こる。これからの展開が楽しみである。










 昭和37年、三島由紀夫37歳の時の作品。自らが宇宙人と思い込んでいる家族。その日常が、これでもかというくらいの文学的表現で、しかも難解な思想のもとに語られ、その落差に滑稽さすら感じられる。家族の長である重一郎と、やはり宇宙人と思い込んでいる大学助教授羽黒の、それぞれ人類を憂いていながら、方や人類救済を訴え、方や人類滅亡を主張する。その激しい議論は圧巻である。三島由紀夫の繊細さと思想の激しさ、文学界にとどまらない、三島由紀夫の挑戦状のように感じられる。











 大学に入ったばかりの古芝伸吾、たった一人の肉親である姉が亡くなる。病気ではあるが殺されたも同然の状況に、大学を中退し復讐を決意する。復讐の結末は、さすが東野圭吾といった感じです。テレビの刑事ドラマを見ているようでした。











 あやかしお宿シリーズ4作め。隠世(かくりょ)の温泉宿、天神屋からライバルの折尾屋へ攫われてしまった、人間である葵。そこには100年に一度の大切な儀式が待っていた。料理を通してのあやかしたちとの触れ合いが何とも心地よく、ちょっぴりミステリーっぽさもあり読んでいて心地よい。さてこの先儀式はどうなるのか、葵はどうふるまうのか。











 あやかしお宿シリーズ5作め、連読です。天神屋から折尾屋へ攫われ、100年に一度の儀式の料理を担当することになってしまった葵。儀式とは海坊主のおもてなし、これに失敗すると災いが降りかかってくる。あやかしの世界も大変です。この儀式を通して様々な関係が明らかになっていきます。











 一人の水墨画的現代アート作家の作品を扱うギャラリーの女性オーナーが、幻の作品をオークションにかけようとしていた矢先に殺されてしまう。作家の名前は川田無名、全く姿を現わさないことから死亡しているのではとのうわさも。その作品はとんでもない値段で取引されるが・・・・。現代アート界を舞台としたミステリー、面白く読むことができました。











 理想的な教師であり神様のような人格者であった坪井誠造が68歳で亡くなった。その通夜で、娘をはじめ係わりのあった人達の思いがそれぞれの立場で語られるていく。当初は善人としての思い出であったが、それぞれが経験した事故や事件が坪井誠造の仕業ではないかということになっていく。果たして坪井誠造の正体は・・・? それぞれのカミングアウト、それは思いもよらない結末でした。











 幕末の江戸幕府の金庫番とでもいうべき小栗上野介。人物としては優秀ではあったものの、残念ながら幕府側の人間であった。幕末は大方維新側目線で語られるが、ここでは幕府目線であり、幕府の内情等が新鮮に感じられた。徳川慶喜や勝海舟像なども面白い。徳川埋蔵金伝説が生まれたのもうなづけるような気がする。








10



 シリーズ完結編です。久々の発売でこれまでのストーリーを忘れかけていましたが、読むうちにすこしづつ思い出しました。今回はシェイクスピアを題材にした物語。栞子さんの母親、智恵子の失踪の理由、智恵子の父親、栞子の祖父でもある久我山尚大の残したシェイクスピアの「ファースト・フォリオ」の謎、古書を通したミステリーが面白いかったです。








11



 文庫本の発売を待っていました。お笑い界、漫才をどう描くのか楽しみにしていました。主人公徳永と先輩で才能を認め師匠とあがめる神谷との人間模様。神谷の異常ぶり、しかし、本人の中では決して異常ではない、漫才界における思考方法やしきたり、その中でもがく芸能人の在りようがリアルに描かれていたように思います。さすが芥川賞といった感じでしょうか。








12



 久々関さんの本です。単身赴任の時、九州中の神社を巡り、どうしてこんなに神功皇后の由来のある神社多いのだろうと不思議に思い、八幡神社の主祭神が応神天皇で、その母が神功皇后であることを知り、なぜ歴史の教科書に出てこないのかを疑問に感じ、そうした私の疑問のツボをピタリと押さえてくれた本でした。








13



 川越が舞台の活版印刷三日月堂の物語の2作め。いわゆるほのぼの系の内容で、読み終えた後が心地良く感じられます。時を超えた友人との繋がり、親子の繋がりが感動的でした。こんな印刷屋が川越にあったら訪ねてみたいとも思いました。








14



 久々司馬遼太郎作品です。幕末の動乱において、尊王でも攘夷でもない独自の思想をもち、長岡藩を独立国家にすることを目指した河合継之助、上巻ではその人となり、考え方、思想を表現することに費やされている。これからいよいよ藩政改革が始まる。面白くなってきた。








15



 遂に大政奉還、激変の時代が始まる、その中を長岡藩はどう動いたか、河合継之助は何を考えたか、慶喜の思い、幕臣たちの考えなど、明治維新の裏側を見るようで新鮮な感じがしました。








16



 長岡藩家老、河合継之助。幕末の動乱の中、幕府に見切りをつけ、新政府にもなびくかず、中立の立場で長岡藩を独立国家にすることを目指した。しかし、時代はそれほど甘くなく、官軍との激烈な北越戦争に巻き込まれてしまう。結局本人の思いに反し、藩は亡くなり、多くの犠牲を出すとともに、本人も戦死してしまう。本編には出てこないが、当時恨まれたとのことである。継之助の言動は、読者であり歴史を知っている我々には理解することができる。しかし、当時の人たちには理解できなかったのではなかろうかと思う。司馬遼太郎は、最後の武士を描きたかったと述べている。その武士の魂と卓越した時代の洞察力からくる行動は奇異に見えたであろう。








17



 前半の出雲の国譲りや天孫降臨神話については、ほぼ私の知識の範囲ではありましたが、邪馬台国の所在地では、通常見向きもされないような説突拍子もない説が紹介されたり、日本人のルーツの話になると、ユダヤ人であるとかバビロニアであるとかの話も出てきて、思わずほんとかよとつぶやきたくなるような内容です。ただ、神代文字という古代文字の存在や、古代史がほぼ西日本で展開されるなか、東日本にも文化があったというところはうなづける気がしました。








18



 紀州のみかん農家で働く家も持たない貧しい使用人の若造が、仲間三人と嵐の中みかんを江戸に運び財をなす。これを元手に材木商を目指すことになり、上野寛永寺の造営の用材入札を勝ち取るまでの苦難が描かれている。紀伊国屋文左衛門の人となりが分かる作品でした。この作品を読み始め、読みにくいなあと思ったのですが、文末の解説にそのへんのところも述べられていました。








19



 あやかしお宿シリーズの兄弟分的作品。平安時代に大妖怪であった夫婦が現代に人間として生まれ変わる、しかも前世の記憶を持ったまま、霊力も備えている。浅草を舞台にしたあやかしたちとの物語。ほのぼの系でもあり、サスペンス的でもあり楽しい作品でした。








20



 終電、それも事故にまつわる7つエピソード集です。第一話で思わず笑わされてしまい。2,3話でスポーツ系のいい話。4話では家族の絆、5話で人生的な話、6話ではちょっと考えさせられ、7話で長い人生のいい話で締めくくる。面白く読めました。








21



 出張先で購入して読み始めました。ごく普通のサラリーマン家族。5年生の一人娘と妻がバス事故にあい、奇跡的に娘のみが助かるが、戻った意識は妻であった。奇妙な状況での生活、やがて娘の意識も甦る。バス事故を起こした運転手の家族との係わりも加わった人間模様が描かれる。何が「秘密」なのか、最後の最後に示される。考えさせられる一冊でした。








22



 小学校5年生の三人悪と呼ばれる悪ガキトリオと、地獄堂という怪しい薬屋の妖怪のような老店主が、妖怪や霊にまつわる事件を解決?していく物語。もともと児童文学だったものを文庫本に書き換えたとのこと。物語の内容はとても児童向けとは思えず、三人組も小学生とは思えない活動ぶりである。作者紹介には、2012年12月永眠とある。








23



 理不尽に一人娘を殺された両親、いたたまれず離婚するが、数年後に母親が不自然に殺される。元夫が事件の真相を突き止めようと捜索を重ねていく。その過程において肉親を殺された家族の思いや死刑の必要性などが語られていく。虚ろな十字架とはどいうことか、考えさせられる内容であった。








24



 中年女性というと語弊があるが、30代から50代の女性の人生について描かれた短編集6編。それぞれ、自ら選んだ職に就いている。結婚歴のある人もいるがみな独身である。それぞれの人生観、価値観、何が幸せか、などを考えさせてくれる作品でした。








25



 最澄と空海の伝記的読み物かと思って読み始めましたが、内容は最澄、空海が生きたころの仏教の教理、教学をひも解くものでした。むしろ哲学書と言ったほうが良いかもしれません。最澄と空海のことも書かれてはいました伝記的要素はほんの少しで、とても難しく理解に苦しみました、というよりよく分かりせんでした。








26



 小江戸川越を舞台にした、リストラアラサー独身女子と人に化けることができる猫たちの物語。そんなアホな、とも思えるところもありますが、ファンタジーとして読めば面白く読めます。猫の性格がうまく表れているように思いました。








27



 徳川家康の若かりし頃から本能寺の変の伊賀越えの様子を描いた物語。戦国時代における大名あるいは豪族間の力学、そして家康の性格、信長の恐ろしさが見事に表現され、本能寺の変のからくりはそうだったのか、とも思える内容であった。








28



 以前読んだ「放課後」の続編的位置づけの本です。高校生の仲間7人がそのまま大学に進み、卒業を控えた4年生になって仲間の女性一人が亡くなる。他殺か自殺か、謎解きが始まるが、更なる犠牲が。剣道や茶道、金属工学に至るまでのからくりがちりばめられています。最後の最後に作者の込めた卒業の意味が分かりました。








29



 1867年大政奉還の年に生まれ大正5年50才で没した漱石、「こころ」はその晩年、大正期になって書かれたものである。「私」と「先生」の関係、そして「私」の父との繋がり、そして「先生」が「私」に宛てた自叙伝とも言えるような遺書の三部から構成されている。「こころ」は人間の複雑な気持ちの葛藤を描いたものと感じました。未完であるとも言われるこの作品、しかしそこがまた趣深い作品にしているようにも思う。








30



 世界で三番目に高い山カンチェンジュンガに挑戦した登山隊が遭難、二人の生還者の証言が正反対、遭難した隊員の弟が兄の遺品のロープに切り込みを見つける。登山隊に何が起きたのか、弟が真実を求め調査を始め、カンチェンジュンガに登ることになる。ヒマラヤを舞台にしたミステリー、登山の専門知識、登山家心理なども含め大変面白く読むことができました。








31



 浅草にある古いアパートの管理人は、アパートの住人でもあり、霊感のある若い女性、その名は、時雨かすみ。実はこのアパートの地下にはある問題が・・・。浅草を舞台にしたかすみと周りの人々に加え、“人ではないもの”との不思議な世界の物語、でもそこには人情味あふれる物語がつづられていました。








32



 刑事の草薙と理工学部助教授で物理学者の湯川、二人は大学の同級生でバトミントン部に在籍していた。草薙刑事が抱える難事件を物理学者の湯川が解決していく。二人のコンビが小気味よい。ミステリーではあるが、事件の犯人を割り出すことより、怪現象の真実を科学的に暴くことが主題であり、あっさり犯人を明かしてしまうところがある。理系の私にはとても面白い内容でした。








33



 久々の江上剛さんの本です。大手電機メーカーに就職するもリストラされ、母親が社長を務める家業の電気屋に再就職。地域密着の電気屋の再建、当然量販店との対決に、そして地域の活性化も絡んだ物語。この母親こと社長が敏腕で、さらに「家電の神様」も現れる。経営、組織の活性化、人心把握術など、参考になるところが多い。実在の会社名や人名をもじった著者の表現にもまた滑稽さを感じる。







34



 怪物商人とは、大倉喜八郎のこと。幕末に新発田藩から江戸に出て、乾物屋から始まり武器商人を経て、様々な事業の係わり、大倉財閥を築き上げた人である。太平洋戦争で解体されたが、大成建設/帝国ホテル/帝国劇場/大倉商事など、現在の多くの企業がそのDNAを引き継いでいる。あまり語られはしないが、すごい人物であったことが伺われる。








35



 ミステリーでありサスペンスでもある。交通事故で女性が死ぬところから物語が始まる。その命が絶たれる瞬間の女性の状況、心理描写が生々しく、あたかも経験したことがあるかのようなリアルな表現に驚かされた。その後、一人のバーテンに不可解な事件が発生する。読み進むにつれ、その謎が解き明かされていくとともに、最初の交通事故との関連も明らかになっていく。やっぱり東野圭吾は読みやすく面白い。








36



 御用人シリーズ7巻目、今回は、古事記/日本書紀の神話の世界に登場するイザナミ/イザナギの子供である、天照太御神(アマテラスオオミカミ)、月読命(ツクヨミノミコト)、須佐之男命(スサノオノミコト)の三姉弟の秘められた物語。アマテラスとスサノオは有名な神様ですが、ツクヨミはあまり知られていません。作者がそこに注目し、竹取物語も絡ませて組みあげたフィクションではありますが、感動ものの一遍となっています。








37



 日本は海に囲まれた島国のため、陸続きの国境が存在しない。そのため日本人としてまとまっていると言われるが、同じ島国のイギリスは日本とは全く異なる分裂の歴史を持っている。ヨーロッパやアフリカの陸続きの国々の国境はどのように決められたのか。アフリカや中東での紛争は、植民地支配からの独立の経緯が大きく影響しているという。いまだに絶えない内戦の原因は民族、部族の繋がりの強さにある。世界の歴史が少し理解できました。








38



 草薙刑事と湯川助教授の名コンビが難解事件を解決していくガリレオシリーズ。この「予知夢」には5作の短編が収められている。いずれも普通の事件のようなところに怪奇現象やオカルト的な内容がからみ、事件を複雑にするが、ガリレオこと物理学者である湯川助教授が、科学的な推理を駆使し謎解きを始め、見事に解決していく。謎解きの納得感と事件解決の爽快感が実に心地よい。面白く読めました。








39



 かつて、日本には旧石器は存在しないという考古学会の通説を覆した、アマチュア考古学者の相沢忠弘による岩宿遺跡での後期旧石器の発見。そして2000年に藤村進一氏によっておこされた旧石器捏造事件。旧石器はどのように学会に認められていったのか、捏造事件はどうして起こり、なぜもっと早く見抜けなかったのか。これらのことを考古学会を通して明らかにするノンフィクション、考古学会が少し分かったような気がしました。








40



 かくりょのお宿シリーズ第6段、前回、波乱がひと段落して終わっただけに、今回はどんな展開になるのかと楽しみに読み進めました。葵の食事処も無難に営業を続け、天神屋の従業員の素性も少しづつ明らかになりつつ、平和裏に物語が進みます。しかし、最後になって、大旦那が“妖都の宮中”に出かけ音信不通になってしまう。何やらまた大波乱の兆し。次回が楽しみです。







41



 この夏、富士山に登頂し、表紙のきれいな富士山の写真と「日本一の名峰はどうしてそこにあるのか?」というキャッチフレーズに惹かれて思わず購入してしまいました。その答えは地質学的には説明され、なるほどと思うものでした。また、地形の見方、地形からみるその土地の歴史などが語られ、私にとっては実に興味深い内容でありました。著者の貝塚爽平氏は、地形学が専門、自らは自然地理学と言っていますが、地質学者として地盤沈下を防げなかったことを憂いていることに感銘しました。







42



 太平洋戦争後、日本が東西に分裂、ドイツがそうであったように、歴史的にあっても不思議ではなかったことである。その分裂を、セーラー服を着た少女が統一を目指す。そこに、自殺願望の少年が絡み、物語が進んでゆく。







43



 久々に関さんの著書です。これまでにたくさんの関さんの本を読んできましたが、詳しく、そして深く古代史を謎解きをしてきた内容を、わかりやすく砕いて表現しているという印象を受けました。卑弥呼の謎、邪馬台国とヤマト朝廷の関係。出雲とは何だったのか。聖徳太子と蘇我氏。聖武天皇と光明皇后そして藤原一族。古事記日本書紀と神話の世界。天孫降臨とは、神武東征の真実。神功皇后と応神天皇など。私としてはわかりやすく面白かったです。