2015 表紙と感想


冊数
書 籍 名
感  想



 暮れに読んだ「チーム」の続編。箱根駅伝後、マラソン日本新記録を出した超個人主義の山城が、世界新記録を出すために設定された大会への出場を拒否。本人の意思と大会関係者の絡み合い、ペースメーカとの競り合いなど実に面白かった。少し消化不良な結末ではあるが、そこに作者が何を描きたかったかが込められているようである。











 津雲神社の存在感がだんだん大きくなってきました。何の神様を祀っているのか気になってしまいます。今回もいくつか“思い出の時計”が登場しました。どの時計もそれぞれに思いのこもった物語でありました。最後の話が鳩時計にまつわる話であったのですが、中学を卒業した時に担任の先生に鳩時計を贈呈したことを思い出しました。今も動いているのでしょうか。鳩時計はドイツで生まれ、最初はカッコウ時計だったそうです。











 神様は昔みたいなパワーはない、神様は万能ではないし悩み事もある。ある面、神様も人間味のあるところがあるのかもしれません。抹茶パフェが食べたい神様、パソコンをする引きこもりの神様、恋をしてしまう神様など、個性豊かな神様が登場します。そうしたある意味わがままな神様の使いっ走りともいえる御用人となってしまった良彦、何とか御用をこなしていきます。意外と神様の世界もこんなものなのかもしれません。











 一寸法師のモデルとなった少彦名神(すくなひこなのかみ)が温泉に入りたいと願う。心が優しすぎて人にとり憑くことができない貧乏神が厄病神と言い争う。人の悲しみを引き受けて1000年以上井戸の中で代わりに泣き続けきた泣沢女神(なきさわめのかみ)は、自ら流した涙で腰までつかり、外に出たいとせがむ。大国主の浮気癖を直してほしいとせまる妻の須勢理毘売(すせりひめ)は肝っ玉母さん。こうした神々の御用を聞く御用人、人間味のある神が実に面白い。











 今回は太宰治の初版本にまつわる事件、大変込み入った内容で少し集中力が必要なほどでした。それだけ引き込まれ、速く読み終えてしまったしだいです。最後の方は入り組んだ人間関係が徐々に明らかになり、予想以上の展開でした。6冊めにして初めて「ビブリア」の意味が分かりました。











 高卒新人ピッチャーが消化試合となったシーズン最終戦で、ノーヒットノーランを達成してしまう。その最後の1イニングの状況を、関係する20人それぞれの視点から展開していく。読み進むうちに、ストーリーの展開とともに、徐々に人間模様が明らかになっていく様はとても面白かったです。











 黒部峡谷でのトンネル堀の物語。黒部と言えば黒四(クロヨン)ダムが知られていますが、この物語りは、それ以前、戦前の昭和11年から15年にかけて、第三発電所建設のために掘られた隧道建設の実態を描いたものです。想像を絶する過酷な労働環境、岩盤温度が160℃を超える中での発破作業、自然発火の恐怖、300人を超える犠牲者を出してまで行われた隧道堀。人夫と管理者との関係。すごいことが行われていたものだとある意味感銘しました。











 久々に関裕二さんの本を読みました。なぜ古代天皇は遷都を繰り返したのか、それは君主が変わったことを示すため、ではあるがそれ以外にも複雑な理由がある。遷都にちなみ、ヤマトの成り立ち、邪馬台国との関係など、改めて「関さんの推理」を確認できた。神武=応神、出雲の国譲りの真実、などなど。











 神社の成り立ちや歴史は、想像以上に複雑であるようです。八幡神社が日本で一番多い神社、それは武家の守り神とされたことがその理由のようです。天神様は菅原道真ですが、元々は祟りを鎮めるために祀られたもの、それがいつのまにか学問の神様に。現在の神社の在り様は神仏習合、言い換えれば仏教の影響を大きく受けている。神社について、少し理解が深まりました。








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 文庫化を待っての読破です。テレビで映画も見ました。でもやっぱり本を読んでから映画を見た方が、私はよいと思います。本の方が想像力が働き、感動が大きいような気がします。映画では、微妙な表現が映像化され、見過ごしてしまい伝わらない場合があるように思います。辞書を作ることの大変さ、執念を感じますが、それだけでなく、登場人物、特に主人公の「まじめ」の個性がこの本の魅力となっているように思います。








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 ここでも神社の歴史はとても複雑であることを改めて感じました。今ある神社の姿は、明治以降に形造られたものが多く、明治以前は神仏習合の影響を受けたものであったようです。








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 西南大学【機械制御研究部】、略して「機研」=キケン(危険)。いわゆる危ない二人の先輩、爆弾マニアの上野部長と迫力満点の大神副部長のもと、キケンの部活動物語、無茶苦茶な学生生活、ここまで無茶苦茶ではなかったものの若かりし頃を思い出しながら痛快に読み終えました。








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 確かにおとぎ話は、埋もれた歴史を語っているように思います。これまでも読んできた “関ワールド” ここでは伊勢神宮、神功皇后についてが多く語られていました。九州の神社を巡り、神功皇后伝説がとても多いことに驚いたのですが、この本を読んで、その理由について納得するところがありました。








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 何の夢を売るのか?それは本を出版する夢。本は売れなくなってきても、本を出版したい人は増えている。「自費出版」ではなく、著者が費用を負担し、出版社と協力して出版する「ジョイントプレス」という方法。その編集部長。最初は詐欺まがいと思ったが、そのうちほんとの詐欺出版社が登場する。こんな出版社もあるのかという一種の驚き。そして百田尚樹の出版会への挑戦状のようにも思える。そして最後のしめがほっとさせてくれる。








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 あやかし=妖怪、それは限られた人にしか見えない。その限られた人である、津場木葵、そしてその祖父津場木史郎。物語はそんな祖父の葬式から始まる。祖父は隠世(かくりょ)=あやかしの住む世界にある宿屋「天神屋」の主人に葵との結婚を約束をしていた。葵とあやかしの料理を通じた奇妙な関わり合いが始まる。それはあやかしとの関係ではあるが、人間の関係を表現している。続編が楽しみである。








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 古事記の内容に合わせて、登場する神様を祭神とする神社が紹介されているので、とても分かりやすく、また、すでに参拝した神社もいくつかあっことから興味深く読めました。古事記、日本書紀は創作ものとはいうものの、それを理解したうえで史実を推測した方がさらに面白くなるだろうと感じました。








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 とても重い内容でした。東北大震災の津波で亡くなられた多くの人の思い、苦しみ、くやしさ、心残りなどが、ラジオのDJという形で軽快に語られています。亡くなられてからあの世へ旅立つまでのあいだ、この世を彷徨う魂の叫び。この放送は、現世の人には聞こえません、亡くなられた人同しでのコミュニケーション手段ともいえるかもしれません。しかし、ごくまれにこの世の人の中にも聞こえる人がいます。想像ラジオで語られる思いは、当事者でない我々には想像できても、おそらく理解はできないでものでしょう。軽快な語りの中に、思いもよらず命を落としてしまった人たちのくやしさ、寂しさを感じます。そして、大震災で大切な人を亡くされた方たちの思いにもつながります。そんな重い一冊でした。







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 珈琲屋の人々の続編。珈琲屋のマスター行介、かつて殺人を犯し刑務所に服役した経験がある。殺した相手は商店街に嫌がらせをしていたやくざではあるが、殺人は殺人である。そうした行介とばついちの元恋人冬子を中心とした人間模様。前作に比べ、シリアスな内容が多く、短編ごとの結末は考えさせられる内容になっています。物語の中での行介には人間としての迫力を感じます。最後はおどろきの結末となっており、続編が待ち遠しいです。








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 映画で話題、“もう一度見たくなる”、本なら “もう一度読みたくなる”とのキャッチコピー。確かに、もう一度読みたくなり、読み返すことになってしまいました。最初は単なる恋愛小説という印象でしたが、まさに最後の最後で恋愛推理小説に変貌します。






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 正直、一度読み終えて、この小説に込められたトリックを見抜くことができませんでした。実は、謎解きはネットで調べたのですが、本文中にちりばめられたヒントというか矛盾というか、なぜ気が付かなかったのかと思うところもあります。トリックを知ったうえでもう一度読むと見え方が大きく変わってしまいます。人生というか、男と女というか、考えさせられるところがありました。


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 イニシエーション・ラブが面白かったので、連続して読みました。こちらも恋愛ミステリーですが、本文の中で種明かしをしてくれているので、2回読む必要はありませんでした。でも、序章の結婚式の様子は読み返してしまいました。本文を読みながらのドキドキ感はセカンド・ラブのほうがあるような気がします。








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 シリーズ3作目。神様の御用聞きである御用人の良彦も御用人の仕事が板についてきました。目付役であり相棒でもある狐の姿をした方位神モフモフとのコンビも絶妙。今回は4柱(神様)の物語、いずれもいい話でした。シリーズはまだ続くようです。








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 久々関裕二さんの本です。これまでは、関さんの本を拾い読みした感じでしたが、関さんも「はじめに」で言っているように、時代の流れとともに古代史を語っており、関さんの集大成のような本です。第1巻では纏向遺跡と邪馬台国がテーマであり、私としては古代史がすっきりした感じです。








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 神武天皇と崇神天皇そして応神天皇の謎。神功皇后とは? 古事記、日本書紀に東海、近江が登場しないのはなぜか? 天孫降臨と神武東征についてなど、古代史は面白いです。








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 聖徳太子は実在しなかった。聖徳太子は蘇我入鹿だった。関ワールド全開の内容です。賛否両論あるようですが、個人的にはそれもありかなと思います。








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 天智天皇(中大兄皇子)と天武天皇、通説では二人は兄弟ということになっています。ほんとにそうだったのか、それぞれの思惑は何だったのか。壬申の乱から持統天皇へとつながる時代、日本書記編さんの目的、古代史の真実が解き明かされていきます。








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 大正時代を背景としたものがたり。冒頭、事件はすでに始まっていました。それはからくり人形TAMA3号、あとでそのことが分かります。本文は四つの事件が次々に解決されていく形で進み、それぞれが面白い。物語の間には“幕間”が織り込まれており、最後につながるようになっています。読み終えて心地よさを感がじられる作品でした。








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 浮世と常世の狭間、あやかしの住む町の幽落町、そんな町に下宿することになってしまった大学生の御城彼方(みじょうかなた)。幽落町には、成仏しきれない亡者が訪れ、その成仏の手助けを、駄菓子屋の主人水脈(みお)が行う。幽落町にはけがれがたまり、神社の毎月の縁日で浄化をを行う。彼方はそのために連れてこられた。幽落町も大変なようである。








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 「幻想郵便局」、「幻想映画館」 の幻想シリーズ三作め。考えてみれば、日記はある意味、人生の教科書と言えなくもない。それで商売をするとは斬新なアイデアです。幻想シリーズはいわゆるファンタジーの世界ではありますが、前作二つに比べ、現実的な内容だなあと思いながら読み進めたのですが、最後で土佐日記の作者である紀貫之、そしてかぐや姫が、千年を超えて生き続けていたという結末はやはりファンタジーでありました。








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 関さんの本をネットで購入、2001年発売、執筆は1993年の本です。邪馬台国とヤマト建国、卑弥呼、出雲などが、これまで読んだ本に比べ、より具体的で熱がこもって書かれているように感じ、その分若干、私案を押し付け気味にも感じました。








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 伊勢神宮の暗号と題していますが、出雲の歴史が多く語られています。日本の歴史は出雲が大きく影響を及ぼしているように思えてきました。伊勢神宮がなぜ伊勢で天照を祀っているのか、いつから祀られているのか、少し分かったような気がします。








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 古事記、その中の上巻、神代の神話の世界に限って語られています。筆者は、古事記を芸術作品としてとらえ、日本人の起源を考察しています。これまで、関裕二さんの著書を多く読んだため、日本書紀と同様に、政治色が強くその背景を勘ぐってしまうところがありましたが、今回は純粋に古典として新鮮な感覚で読むことが出来ました。本居宣長、津田左右吉についても理解が進みました。








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 友人からもらった本です。団塊の世代、会社一筋のサラリーマンの定年後の生活。自分を振り返りここまではと思うが、考えさせられるところは多々ありました。そう遠くないことのように思います。








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 幽霊が見える主人公、凛と犬のシルビー、ドッグカフェでの出来事から徐々にミステリーっぽくなり、最後の章でサスペンスになり、思わぬどんでん返しがある。いろいろ考えさせられる内容でした。








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 シリーズ4作め、これまでは短編集でしたが、今回は一つの物語の長編です。しかも、これまではどことなくユーモラスだったのが今回はシリアスなミステリーっぽい内容でした。舞台は和歌山、紀国、神武東征の一幕で戦った名草戸畔(なぐさとべ)の物語。現在と過去のシンクロ、読みごたえありました。








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 幻想シリーズ四作め、幽霊専門の探偵社の物語。幽霊が何人も登場してくるのに、その怖さがなく親しみやすく描かれ、むしろ怖いのは人間の方である。幽霊主人公である「大島ちゃん」、自分がなぜ死んだかもわからない、その秘密を後輩の現役中学生ペアが追い続ける物語。現実にはありえないファンタジーの世界ではありますが、ミステリーでもあり、ちょっぴりサスペンスでもあります。








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レキシントンの幽霊


村上春樹


文春文庫


 村上春樹の短編集、村上ワールド満載でした。7つの話が掲載されています。人間の心の奥深くを描いているような気がしますが、中には何が言いたいのかよくわからないものもありました。やはり村上春樹の作品は、ノーベル賞候補に挙がるだけあって、私でさえちょっと違うなと感じることができました。






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 箱根駅伝学連選抜を描いた「チーム」、その続編、マラソン世界新記録を狙った「ヒート」、さらにその続編がこの「チームU」です。超個人主義、傲慢な天才ランナーの山城悟。そんな山城のケガからの復活と自らのラストランに向けた人間模様が描かれています。ランナーの心理描写がたいへん見事でした。








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 関さんの最新刊文庫、これまで読んだ内容がコンパクトにまとめられた感じです。最近のエピソードも書き込まれていて新鮮さもありました。








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 大正12年9月1日午前11時58分44秒、帝都が大揺れに揺れた、世にいう関東大震災である。折しも山本内閣発足のさなか、後藤新平が内務大臣に就任、帝都復興に乗り出す。先日、後藤新平の生家のある岩手県水沢を訪問してきたばかりのため、興味を持って読みました。後藤新平の大風呂敷の帝都復興案が、抵抗勢力によって骨抜きの計画に成り果ててしまう。どこかできたような話です。事をなすことの大変さがよくわかります。後藤新平の人となりの一端が少し理解できました。







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 仕事一筋の森悟、家事は一切せず、子供とも話もしない。そんな夫に愛想をつかし家を出る妻。しかし、震災による妻の突然の死。残された子供を妻の実家に預けようとする悟に、突然妻の友達と名乗る女性が押し掛け、家事を教え始める。心温まる夫婦愛ではあるが、若干複雑な気持ちで読みました。







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 突然職を失った名取司23歳、神保町の大きな本屋の中で不思議な古本屋「止まり木」に紛れ込む。そこにいた不思議な店主「亜門」、奇妙な付き合いが始まる。亜門の正体は後半明らかになります。心温まる内容でした。物語は続きそうな気配がします。







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 堂場瞬一のマラソン・駅伝シリーズ、既読の「チーム」、「ヒート」、「チームU」の原点となる作品。大学同期、箱根駅伝にも優勝した3人田島、武藤、青山の個性的なランナー、卒業後、それぞれのランナー人生を歩むが、8年めにして初めて同じ大会に出場、しかもオリンピック代表を目指しての激突。謎の人間からドーピングの誘いを受ける主人公の青山、レースの結果は・・・。堂場さんのランナーの心理描写が相変わらず見事です。







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 文章表現等はさすが村上春樹という感じでしたが、私にとってはけっこう重い作品でした。死ぬ人が多すぎるし、この世界が異常なのか、我々の世界が異常なのか分からなくなってきます。いずれにしても人間は弱い人間であるということを言いたいような気がします。







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 以前から本屋で気になっていた本でした。珈琲のバリスタのお話。ミステリーではありますがどちらかというとほのぼの系。話が前後したり、どんでん返しがやたら多くてストーリーを見失いかけてしまうことがしばしば。主人公アオヤマの意図と作者の意図のわざとらしさにあとから気が付きますが、最後は落ち着くところに落ち着きました。







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 銀行をめぐる人々の物語。それぞれの生きてきた背景、人生模様、それらが錯綜しながら話が進んでいく。銀行業界も厳しく、業績を上げるための厳しいノルマ、それを達成するための葛藤、そんな中、様々な事件が起こる。銀行ではないが、同じサラリーマン社会に生き、他人事とは思えないところもありながら読みました。







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 「かぐや姫」や「浦島太郎」などの昔話をモチーフにした7つの短編集として読み始めたが、読み進むにつれ繋がりが何となく見えてくる。それは三か月後に隕石が地球に衝突、限られた人間だけがロケットで脱出できるという背景。過去を振り返る形で語られる物語は、とても重く深く感じられました。